入試ガイド・問題集2023
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美術学科洋画専攻❷❶❷❶  43モチーフの第一印象から白いシャツの存在感とガラスの映り込みの対比に反応しているのが伝わってくる。下描きではシンプルな構図と白黒のコントラストによる画面構成に狙いが絞られ、明暗の確認がされている。木炭の色調とトーンの変化を表現する確実なテクニックを持ち、シャツや帽子の質感表現、ガラスの複雑な反射の抽象化など、幅広い表現方法によって物語性やそこに流れる時間すら感じさせる。冷静な観察眼による力作である。画面の隅々まで丁寧に描画された良作である。手数が多く、木炭をのせる、抑える、取る、という基本的な手法で素直にモチーフの特性が観察、描写されている。見せ場として、刷毛の印象を最も明るいトーンとして主役にした絵作りに、作者の視点を感じる。鉢の前後や透過したガラスの関係など距離感や空間が曖昧ではあるが、前述した作者の真実に迫らんとする取り組みがこれらの弱点を凌駕している。作者の長所が光る一点である。【木炭】【木炭】

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