大学案内2023
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假屋崎 「自分の根底に、誰にも負けない技術や知識をたくさん蓄積すること。それが偽物ではなく本物を生み出す力となります。そのためにも、世界中の良いものにたくさん触れてみること。例えば、私の父は昔から建築が大好きで、家族でさまざまな神社仏閣を巡りました。その影響で私も建築好きになって、今では松山城や名古屋城などの古い建物にお花をいける『歴史的建築物に挑む』という個展をライフワークとして続けています」舘鼻 「なるほど。僕は最初に海外へ出た半面、ここ数年はあらためて日本をベースに活動しています。そのことが日本を見つめ直す良い機会になりました。自分の背景や日本の歴史・文化を振り返り、また次の新しいことに向かっていく。僕の制作にはそういう温故知新のサイクルがあると感じています」假屋崎 「壁にぶち当たって、挫折を経験して、それを乗り越える経験はすごく大事です。疑問や違和感をないがしろにせず悶々と悩むことは成長の原動力になります。さらに視野を広げて自分を客観的に見るために、今は難しいけど、学生さんにはぜひ海外に飛び出してみてほしい。女子美から世界へ羽ばたく方がどんどん増えてほしいですね」舘鼻 「今は、自分から発信する方法がたくさんあります。国境や年齢、性別の壁をいとも簡単に飛び越えられる。そんな中、ものを作る人たちは、新しい価値観、新しいコミュニケーションの形を生み出せる立場にあります。とても誇らしいことです」假屋崎 「美や感動を生み出す人はジャンルが違ってもリスペクトし合える。それも素晴らしいことですね。美は心を動かして、つながりを呼び、経済も動かします。美術や美しいものには未来をつくるパワーがある。人が幸せに生きるためには美意識が必要だと思っています。私は実のところ人間性はスパッとしているんです。それは確かな美意識があってこそ。美意識が磨かれていれば、自分のエネルギーやお金をどう使うか優柔不断にならずに決められます。美意識は常に試行錯誤して、よりよく磨いていくものです。私はコロナ禍で、好きに使える時間がむしろ増えて、人生が豊かになりました。今は、自分と向き合ういいタイミングだと思っています」舘鼻 「インプットに励み、引き出しを増やす時期ですね。僕も今までできなかったことに集中できる時間が増えました。アフターコロナに向けて準備をしています。表現者にとってコロナ禍はチャンスでもあるわけです」假屋崎 「学生さんの中には、コロナ禍のストレスを感じている人も多いことでしょう。でも、チャンスは準備をした人にやってくるんです。コツコツ知識を貯め、技術や発想を磨いて、いざという時に備えてくださいね」(2021年6月取材)307未来手帖SPECIAL 対談美は世界をつなぎ、未来をつくり、美は世界をつなぎ、未来をつくり、人を幸せにする。人を幸せにする。

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