美術学科洋画専攻❶❶ ❷❷33モチーフのもつ固有色を素直に再現した秀作である。それぞれのモチーフをよく観察し、特徴を捉え、画面の隅々にまで神経を注いで描き切っている。また下描きを見ると、構図についてもセットされた緑の紐から画面の中に生まれる三角形の構図を深く考えている様子がうかがえる。そして作者が好きな感覚なのだろうか「キラキラ」という文字にあるように、銀色のシートやガラス、金属のボールに反応し、質感を更に追い込んで描いたことがこの作品をより魅力的に見せている。下描きの考察から充実したモチーフ観察が読み取れる。メインとなる網を引き立たせるための画面作りが計画的に行われ、作者がモチーフから受け取った印象を十分に表現したと言える。暖色と寒色の等しいバランスの落ち着いた色調の中に、あえて彩度を下げて描き込まれた赤い網が画面を引き締めている。補色のタッパーの緑の表現も美しい。エプロンの配置やタッチの変化で奥行きのある豊かな空間を作り、モチーフから感じた重力がより際立つように工夫がされている。作者の意志の強さを感じる良作である。【油彩】【油彩】
元のページ ../index.html#35