美術学科洋画専攻❷❶❶ ❷35抑えた色調の中に部分的に彩度を操作し、画面全体の色彩を響き合わせているところが巧みである。主役のエプロンの形態が不思議な脱力感を醸し出していて面白い。下描きにはなかった背景は制作中に生まれたイメージだろうか?やや唐突に感じるが、モチーフから感じた空気を筆でなぞっているようにも見え、独自の絵画空間を作ろうとする工夫が感じられる。エプロンを囲むモチーフがタッチや色を生かしながら効果的に描写され、抽象性の高い空間でも物が置かれた平面の拡がりを感じる画面になっている。ネットの有機的な線や、上部の棒の直線、周辺のモチーフ及び背景の面など、線と■間による色面が構成の中心となっている。実際のネットは赤色であるが、 作者は様々な中間色に置き換えることで 奥行きを表現し、作品の見せ場とした。 後方にある手袋や洗剤の色面の扱いもその対比として効果的な描法である。下書きは作者の独り言のような文字と図で埋め尽くされており、短時間でモチーフへ向けた探究心を強く感じる。そこには独自性のある解釈も見受けられ、油彩への導きの過程と合わせて評価した。【油彩】【油彩】
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