❷❶❶❷36モチーフに反応しながらも、出題の意図を見抜き、画面を構成するモチーフの要素や効果的な描き込みと仕上げのポイントを確認しているのを下描きから読み取ることが出来る。構図は絵画的な緊張感を持つ場面となるように意識され、トリミングからも緻密な思考の跡が伺える。背景のベニヤ板面の、木目と洗剤の容器の光が透過された影の美しい描写に本領が発揮されている。ものの存在感を描き分け、仕上げでは細部の描写にもこだわるなど、入試作品ながら写実表現を愉しんでいるのが伝わってくる。下描きからモチーフの構造や全体感を把握しようとする姿勢が見て取れる。その観察から、エプロンのドレープに美を見出し、レモンを主役とする構図を決定したのだろう。メモ書きに「黒背景」とあるが、手前にスポットライトが当たる舞台のような画面作りをイメージしたと考える。黒一色の背景の扱い方は他にも方法があったと思うが、木炭を巧みに扱って幅広いトーンを出し、モチーフを魅力的に感じて隅々まで丹念に描写している。確かな技術力でドラマチックな空間を作り上げる表現力を評価した。【木炭】一般選抜(A日程)【木炭】美術学科洋画専攻
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