入試問題集(2024年4月開設:スペース表現領域)
4/6

問題例ある寒い国の小さな飛行場で、乗るはずの飛行機が現れず、もう何時間も窓の外の凍ついた滑走路を眺めています。ようやく姿を表した飛行機はいったいどこからやってきて、どこへ行くのかを想像し、創作した物語を1200字以内で書きなさい。解答例 ここはアンカレッジ空港。かつては日本から多くの国際便が給油のため、経由していた空港らしい。今は日本からのヨーロッパ便はシベリア経由の直行便となり、ここを経由地とする旅客機は存在しない。 アンカレッジ空港経由。小さいころ、父から聞いた空港の名前が気になっていた。その時代は日本からヨーロッパに行くためにアンカレッジ空港に着陸、燃料の給油のために乗客は一旦降機し、免税店やレストランで過ごしたらしい。日本人客が多いこともあり、空港内には和食屋、うどん店、日本語のできる従業員がいるなど、とても賑わいを見せていたとのこと。父の話を聞きながら、アラスカの雪原の風景が広がる中に、小さな日本があったことをイメージして、不思議な感覚を覚えた。その話を聞いてから、しばらくは思い出すことはなかったが、父が他界し、遺品の整理をしていた時、アンカレッジ空港でのスナップ写真を見つけ、あの不思議な感覚を思い出した。 アンカレッジ空港への直行便はないので、日本からアメリカに飛び、国内線でアンカレッジ空港に向かった。悪天候の中、アンカレッジ空港に到着、早速荷物を預けて空港内を散策した。父の話の面影はなく、経由便もないため、人の気配も少なく、閑散としていた。代わりに、ひっきりなしに貨物便が離着陸し、物流拠点として活況を呈していた。窓の外には荒涼とした雪景色が広がっていて、再現なく、どこまでも続いているように見えた。アラスカの観光拠点としてオーロラ観光が行われているとのことだが、今回の旅の目的はアンカレッジ空港だった。 空港内で時間を潰し、帰りの飛行機を待っていた。しかし、アラスカの広い範囲で吹雪となっており、まだ出発地の飛行場から飛び立っていないとのことで、到着が遅れるとのこと。空港内でしばし待つことになった。この時期、アラスカは白夜で空は明るかったが、吹雪のため、視界は悪く、空には厚い雲が広がっていた。飛行機を待ちながら、アンカレッジ空港のことを考えた。アンカレッジ空港に来た理由は、かつての賑わいは今どうなっているのだろう、という素朴な疑問であった。その時に父の言葉にあった小さな日本は今どうなっているのか、かつて栄えた場所は今枯れているのか?それを確かめたかったのだ。 今のアンカレッジ空港はかつての旅客機での賑わいは見られないが、貨物便、物流で活況を呈している。時代の流れとシンクロしながら、存在価値を増している。そのしなやかなアンカレッジ空港の姿に、なんだか気持ちが落ち着いてきた。これからの生き方に少し迷っていた自分を空港に置き換えて、時代の流れに身を任せながら、しなやかに生きていこうと思った。 吹雪がやみ、白夜の太陽が顔を出したと思ったら、長時間待っていた帰りの飛行機が到着した。まるで太陽が飛行機の到着を暗示したように…。さあ、日本へ帰ろう。文章表現 [問題例と解答例]01

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る