広報誌No.198_
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文化にとても関心がありますから。─海外での活動を志す学生にとって貴重なアドバイスですね。もうひとつ、アドバイスできることがあるとすれば、最初から自分の選択肢を絞りすぎないことです。私自身、「絶対にイタリアで活動していきたい」と心に決めていたわけではありません。元々は海外で技能を身につけて日本で活躍したいと考えていたほどですから。でもイタリアでさまざまな出会いに恵まれ、仕事がつながっていったことで、結果的に30年以上住むことになりました。多様な選択肢に目を向けてみることで、可能性が自ずと開けてくるはずです。12Special Report近藤さんが女子美でワークショップを開催「ペーストペーパーで創作の楽しさを感じてほしい」コンベンティーノの中庭での展示会海外で活躍する女子美生たち 特別編女子美術大学の卒業生を中心に、社会で活躍する女性アーティストたちを招いて行われる大学主催のワークショップ。2023年8月、学生たちが熱心に耳を傾ける先には、近藤佳子さんの姿がありました。今回のテーマは「ペーストペーパー」。元々はヨーロッパで生まれた紙の装飾技法のひとつで、絵の具を混ぜ込んだ糊で紙に模様をつけていくものです。日本ではあまり浸透していませんが、欧米では本の表紙や見返しなどに使われてきました。「特別な道具が要らないところがペーストペーパーの魅力。ハケ、糊、絵の具があればできますし、ハケの代わりにフォークやヘラを使うこともできます」と近藤さんは話します。基本的な手順のガイダンスが終わると、いよいよ実際に手を動かしてペーストペーパー作りへ。学生たちは好みの色の絵の具を糊と混ぜ合わせて、紙の上に思い思いの模様を描いていきます。「手本は示しますが、その通りに描く必要はありません。むしろ大切なのは、型にはまらないこと。自由な発想で描いてみることです」と語る近藤さん。学生たちの楽しそうな姿に「創作は、自分を表現することでもあります。創作の楽しさを再認識してもらえたら、このワークショップの目標は達成です」と頬を緩ませます。女子美術大学では今回のワークショップにとどまらず、さまざまなフィールドで活躍する女性アーティストと学生との交流イベントを定期的に開催。「芸術による女性の自立」という建学の精神に則り、学生たちに多様なロールモデルを提供し続けてきました。ワークショップで出会う女性アーティストたちの活躍が、自身の学びと地続きであることを肌で感じてもらう場になっています。

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