❶❶❷❷34「鉛筆による下描き」では、中央のシャンパンボウルを主役にせず、自分の位置から一番近いレモンからキャベツへと視点を動かす設定に決めたことが伺える。纏めにくい構図なのだが、モチーフの色面や明暗を利用しうまくバランスをとった。主張の強い表現では無いが、黄色味を帯びた柔らかな色彩は心地よく、木製の台、キャベツの葉、レモンを入れたビニールケース等の質感表現の魅力や、台の手前から奥へ抜ける空間表現の的確さ、また無理や無駄を感じさせない絵の具の扱いに大いなる可能性を感じた。鉛筆による下描きではモデル台に対して真横の位置から全体を大きく捉え、モチーフが配置された空間とモチーフの関係をよく観察し、作者自身の描きたいところに構図を絞り決めていく段階がよく伝わってくる。油彩画になった際には大きく空いた背景に対して、シャンパンボウル、ガラス板、布などの質感をおった表現と密度のあるモチーフへの描き込みが画面に強弱のリズムを生み、視点が手前から奥へと導かれる。全体を包む明るい色調も美しく、モチーフから作者が受けた印象を素直に描いた秀作である。【油彩】【油彩】一般選抜(A日程)美術学科洋画専攻
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