美術学科洋画専攻❷❶ ❶❷37コントラストと粗密の関係性が目を引く作品である。下書きには「写り込んだ不思議な感じ」「なにがなんだかわからないかんじ」という記述があるが、映り込みの多いモチーフによる複雑で多層的な空間設定に臆することなく、印象を素直に受け入れたことがこの作品の魅力となっている。静物画としてみると物の位置関係や構造がやや弱いが、緑ホースをハイトーンに設定し、虚像と実像を線の要素で繋げた解釈や、白い布を中間色に置き換え画面の左右をゆったりと繋げるものの見方など、柔軟に画面構成を行った良作である。直観的な構成力を持っている。多くのモチーフの中から背景に組まれた抽象的な構図を見つけ出している。下描きの段階から狙いを定め背景の蛇腹によって生み出される光の反射と影の効果を観察し、描写の手順を確認しているのがわかる。木材それぞれの異なる質感を描き分け、蛇腹が生み出す複雑な陰影のグラデーションの表現にもこだわりが感じられる。形と明暗によってリズムが作られ、モノクロならではの表現として成功している。背景とモチーフの間にも空間を感じさせ、画面が平面的にならない工夫が伝わってくる。【木炭】【木炭】
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