アート・デザイン表現学科全領域共通65 奥行きがよく描写されていることにより、空間を感じるデッサンである。靴下の表現に粗さがあるが、紙や手鏡の質感はよく描けている。ハーフトーンの表現の幅を広げられるとなお良い。手鏡の映り込みや文庫本ノートの間に滑り込んだソックスがモチーフ間の関係性を表し、劇的な空間を演出している。全体的に鉛筆のタッチが均一であり、モチーフの特性をよく観察し丁寧に描けるとさらに良い。描写力や構成力にはやや乏しさを感じるが、靴下と鏡に映るカーテンを1つの繋がりとして描写している部分は、独自な視点として評価できる。鏡という物質の特性をうまく捉え、鑑賞者に少し錯覚に陥るような感覚を与えている。構図のバランスが良く、それぞれのモチーフの特徴がよく表現されている安定感のあるデッサンである。本の表紙、手鏡の質感の違いやコントラストを表現できるとよかった。文庫本ノートを奥に配置し、画面全体を使った大胆な構図である。質感の描写は力強く、モチーフの関係性に強弱をつけているため、空間性を意識して描かれていることがわかる。影の描写に柔らかさを加えると空間全体のバランスがさらに良くなるだろう。手鏡、文庫本ノート、靴下、それぞれのモチーフの細部の質感がうまく描き分けられており、生活の気配を感じることができる描写になっている。手鏡に少しだけ写る部屋の景色は、画面に物語性を生み出す効果にもなっている。【ファッション表現領域】鉛筆デッサン 採点ポイント●モチーフをよく観察し、形態、質感、色調などが的確に表現できているか●モチーフの構成、配置等、バランスよく表現できているか●モチーフが置かれた空間(奥行き、高さ、広がり)が感じられる表現となっているか【スペース表現領域】鉛筆デッサン 採点ポイント●画面の中にそれぞれのモチーフの大きさと配置を考えたバランスの良い構成であるか●それぞれの基本的な形を捉えるとともに、モチーフ間の空間を表現しているか●鉛筆の特性を活かして、それぞれのモチーフの質感を表現しているか【クリエイティブ・プロデュース表現領域】 鉛筆デッサン 採点ポイント●画面の構成力とモチーフの描写力●どのような視点でそれぞれのモチーフを捉えて表現したのか
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