スペース表現領域教員インタビュープリミティブスペース(原初の空間)テンポラリースペース(瞬間の空間)イマーシブスペース(没入する空間)212スペース表現領域での学びとは?西田 スペース表現領域のカリキュラムの特徴は、空間を3つの概念で捉えて学んでいくことにあります。一つ目の概念が「プリミティブスペース(原初の空間)」。まさに空間の原点を知るところから始めます。空間が立ち上がる瞬間ってどういうことなんだろう。空間の定義って何だろう。人がいて成り立つ空間というものの原点にまつわるさまざまなことを考えていきます。次に「テンポラリースペース(瞬間の空間)」。これは仮設の空間、瞬間の空間を意味しています。たとえば光の入り方の違い、椅子の配置の違い、そこで行われることの違いによって、空間というのは驚くほど変容していきます。空間における瞬間の変化などを考えるのがテンポラリースペースです。それらを「イマーシブスペース(没入する空間)」へとつなげていくのは、スペース表現領域の大きな特徴といえるかもしれません。VR、メタバース、劇場、映画……新しいテクノロジーを使って、物語のなかに感覚が没入していく空間。非日常で圧倒されるような空間体験について考えていきます。ここはアートの領域とも深くつながってくると思います。そして、この3つの概念に共通しているのは、どれも「人間の感覚」に立ち返って考える必要があるということ。だから実習や演習など、体験的な学びから自分なりの「感覚」を発見していく、人間の感覚というものを重視したカリキュラムになっています。010203「空間」とはそもそもなんでしょう? 森の陽だまりからカーテンの裏側まで、空間の始まりについて考えます。カーテンが開いているのと閉じているのとではその空間の経験は同じでしょうか? 日常の様々な場所に隠れている空間の表情の変化について考えます。日常と非日常の境目はいったいどこにあるのでしょう?普段の生活を彩り豊かにするような、知覚を刺激し没入させる空間の可能性を探ります。後藤 西田先生が紹介してくださった3つの概念からのアプローチを通して、アナログ空間、デジタル空間両方を扱うことは、スペース表現領域の特徴ですね。また、本領域はアート・デザイン表現学科の一つの領域でもあるので、学科内のメディア表現領域、クリエイティブ・プロデュース表現領域、ヒーリング表現領域、ファッション表現領域といった他領域と一緒に演習を行う機会も多く設けていきます。建築やインテリアなどの人工物だけでなく、自然というのも大事な要素ですから、自然豊かな相模原キャンパスとの連携も行っていく予定です。それからスペースの拡張という意味で、宇宙というテーマも取り上げていきます。重力のない宇宙空間という題材に取り組むことは、既成概念を飛び越えて発想する訓練にもつながります。宇宙旅行の始まりもすぐそこですから、宇宙空間での空間利用のあり方について考えを深めることも視野に入れています。西田先生もおっしゃるように、本領域では実習や演習などを多く取り入れたカリキュラムを予定しています。体験することを通して、人と違う視点、自分なりの物差し、たくさんの発想の引き出しを持ってもらいたい。大学を出たあとの人生は長いですし、世の中の変化のスピードも増しています。空間をデザインしたり、考えたりするにあたって、色褪せることのない自分なりの軸やこだわりを見つけて社会へ飛び立ってほしいです。スペース表現領域の3つのアプローチ
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