大学案内2025
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五世代で女子美生えていました。夏休みには油絵、年末には年賀状のための版画づくりなど、作ることの楽しみが常に生活の中にありました。ふたりでよく一緒に絵を描いていましたね」と話すおふたり。姉妹でライバル心のようなものもあったのだろうか。「そういう風に考えたことはなかったですね。人のことはそんなに気にならないんです。女子美時代の友人たちもそうでした。いいところは取り入れて、それぞれにがんばろうって。みんな、自分をしっかり持っていたんですね」そんなご一家から、2022年4月に五代目女子美生が誕生した。恵理子さんの長女、好央さんだ。「母から女子美時代の楽しかった思い出はよく聞いていて、心の中になんとなく女子美という存在がありました。本格的に受験を考えたのは、高2になって具体的に進路を考えた時でした」。そう話す好央さんが選んだのは、洋画専攻。「母と祖母が墨彩画をやっていて、私自身も幼少期からずっと描いていました。だから日本画は大好きで身近な存在です。そんななかで進学先に洋画を選んだのは、1年次で洋画・版画両方の技法を学べることや、銀細工、CG、メディアなど幅広い表現力を身につけられるカリキュラムが魅力的に感じたから。幅広く自由に学んだうえで、好きな日本画ならではの空気感や線の魅力を、日本画という枠にとらわれずに表現してみたいと考えています」と、意欲を燃やす。ところで好央さん、入試にあたってご家族からはどんなアドバイスをもらっていたのだろうか。「受験を決めてからは美術予備校に通わせてもらいましたが、母と祖母にも描いた作品を見せ、アドバイスをもらっていました。ふたりとも褒めて伸ばすタイプ。絵の魅力を引き出しながら教えてくれたので、入試にも自信を持って挑めました」と、好央さん。そんな好央さんを応援し続けた母・恵理子さん、そして祖母・倫子さん、伯母・真理子さんも、次世代の女子美生になったばかりの好央さんを見守りながら、嬉しい表情を浮かべていた。新たに創作の道へと進んだ好央さん。その大先輩である3人の元女子美生は、現在もそろって創作活動を続けている。結婚、妊娠、出産、子育て。たくさんのライフステージがある女性にとって、美術をずっと続けていくことはそれほど簡単なことではない。最後に3人に、美術を「続けるコツ」を聞いた。「“好き”であることだと思います。そして続けていくうちに、より好きになるんです」(倫子さん)。「どんなに細くてもいいから続けること。どんなに大変でも、必ずよかったと思える時がくるんです。それが嬉しくて、また描こうと思う。その繰り返しです」(恵理子さん)。「思い立ったら、小さなものでもいいから作る、描く。立ち止まらずにやっていく。止まってもまた一歩踏み出す。そうして私は、少しずつ作り続けています」(真理子さん)。明治から令和まで、物作りの精神をつないできたご家族の挑戦は、まだまだ続いていく。一代目のふささん(明治41年頃)明治生まれ。本郷にあった菊坂校舎で学んだ。二代目の信子さん(昭和11年頃)とてもお洒落な方だったという。三代目の倫子さん(昭和39年頃)女子美のスケッチ旅行にて。四代目(姉)の真理子さん(平成3年頃)夜遅くまで、仲間と制作に没頭していた。四代目(妹)の恵理子さん(平成3年頃)学生時代の体験が今も原動力に。361

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