撮影:上野則宏撮影:女子美ラボ(2025年4月取材 Photo:吉濱篤志)MIYAMOTO HANAKO WORKS009「VOCA展2025」 VOCA賞受賞作品 《在る家の日常》「ジャグホースの旅」 (2007〜 2016)「AIR motomoto」 (2020 〜) 宮本さんが運用する熊本県北部の荒尾市にあるマイクロレジデンス施設個展「出られずとも乗り。出られずとも漕ぐ。」 会場:Joshibi SPACE 1900アーティスト・トーク「現在地点について。」の様子 (2024)「アーティスト・イン・レジデンス概論」特別講義の様子 (2025)していたと思います。楽しくなった理由は、高間夏樹先生(2018年退任)との出会いです。高間先生は私が2年生の頃に退任されたのですが、その後も個人的に制作のアドバイスをいただいていました。そんな高間先生とのやりとりの中から始めたのが参加型の 作 品 制 作。なかでも「ジャグホースの 旅 」は 大 学 2年生の頃から10年 続けたプロジェクトです。目的は、自分にとって心のしこりのような存在である父との関係性を変えること。道ばたで知らない人に、父が 働いていた工 場で拾った蛇口とホースを渡して、写真を撮らせてもらう。すごくドキドキするけど、これを続けていけば、自分のコミュニケーション能力が上がって、いつか父とちゃんと話せるようになるんじゃないかって。でも結局、うまくいかなかった。それ 以 来、モヤモヤを抱えた私そのものを変えるための制作に変わっていきました。作るしかないから、作ってる私は、作家になろう、なりたいと思ったことはないんです。私にとって、作ることと生きることは同じ。作るしかないから作ってる。それだけなんです。モヤモヤがなくなったら、たぶん作らなくて済むんだけど、今のところはまだですね。そんななかでも、自分が 変わることに一 番つながったのが、故郷の荒尾市で始めたレジデンス「motomoto」の取り組みです。ドイツでレジデンスに触れて、いい制度だな、自分でもやれるかもしれないと、2020年から試験的に始めました。レジデンスって共同生活みたいなもの。生活が重なり合う日々を過ごすうち、人との距離感はかなり近くなりました。VOCA展には2 回 出しているのですが、1回目の審査員の方が今回の作品を見て「宮本さん、だいぶ開いたね」って言ってくださったのは印象的でした。バカは全力で女子美で過ごした大学・大学院時代は、私にとってすごく大事な時間でした。特に高間先生には退任後も継続してお世話になり、高間先生からいただいた「バカは全力で」という言葉は、今も私の大切な精神です。もちろん高間先生だけでなく、女子美の先生方は本当に親切な方ばかり。たくさん助けていただきました。あとは、女子美って、女性しかいないから、その点でも集中して制作に打ち込める環境だなと思っています。男性がいるが故の痴話喧嘩のようなものが一切なく、すごく平和。それぞれが集中して自分のやりたいことをしている、そんな環境が大好きでした。
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