大学案内2026
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インタビュースペース表現領域教員インタビュー教員プロフィール空 間 の可能 性 を ひ らく「スペース表現領域 」ってどんな場所? アート・デザイン表現学科に、2024年度から新たに設置されたスペース表現領域。その中心を担う2人の教員が、本領域での教育にかける思いと、領域の特徴や魅力について語ります。スペース表 現 領 域が 生まれた理 由九州芸術工科大学芸術工学部工業設計学科卒業後、株式会社GK設 計に入 社。プロダクト、サイン、インテリア、ディスプレイ、景観デザイン等に携わる。その後、東京大学新領域創成科学研究科環境学専攻社会文化環境コースにて、屋外での物理的環 境と人 間の行 動についての研究を行う。在職中の主要実績として丸 亀 市 猪 熊 弦 一 郎 現 代美術館/市立図書館家具サイン実施設計、新型郵便ポスト開発、仙台市歩行者系サイン整備計画等がある。ノルウェー王国ベルゲン芸術デザイン大学芸術学部修士課程修了。光州ビエンナーレ(2014年/韓国光州)、札幌国際芸術祭 (2014年/札幌)ほか多数で作品を発表。ロンドン、台北での 活 動を経て、2018年 から2019年にかけてポーラ美術振興財団在外研修員としてモスクワに滞在。風景と人との対話を生む環境インスタレーション作家として活動する他、舞台美術、空間デザイン、インスタレーション、パフォーマンス等も手がける。西 田 スペース表 現 = 空 間 表 現。こう聞くと、建 築やインテリアに関わることを学べる場 所?と思う方 が ほとんどだと思います。ですが、私たちが目的としているのは、そのイメージとは 少し違っています。背 景にあるのは、「 建 築、インテリア、都市 計 画といったような 専 門 的な 領 域 にゴールを定めるのではなく、人 間の根 元にある感 覚 や 欲 求をよく知ることから空間にアプローチしたい 」という思いです。たとえば建築物の始まりは、人間が安全に過ごせる場 所(シェルター)です。そこに 居 心 地 の 良さが 加 わり、装 飾 性 が 現れ、建 築という分 野はどんどん 発 展してきました。それと同 時に建 築は、意 匠 設計、構 造 設 計、歴 史 家、法 律 関 係など、高度に細 分 化・専 門化され、作るための技 術や知 識の方にフォーカスが 当たっていきます。技 術 先 行のあり方は高 品 質なものを生み出せる一方で、人間の感覚に直 結したプロセスがとりづらくなってしまうという課 題もあります。こういった背 景があり、スペース表現領域では「空間ってそもそも何?」というところから空 間の 原点を知り、原初の視点を持って空間そのものを見つめ直すことができる人を育てたいと考えています。空 間の原 点に立ち返り、人間の感覚を大切に学ぶことができる場 所。そんな学び の 場をめざしてスペース表現領域は生まれました。後藤 加えて、今の時代背景もありますよね。僕が 社 会に出た頃はモノやデザインがまだまだ足りなかった時代で、人のことを考えてつくられていないものも数多くありました。でも今は社会が成熟して、ほしいものはすぐに手に入るし、身の回りのほとんどが「デザインされたもの」ですよね。インテリアデザインでも建築でも、すでにさまざまなことが 実 現されていますし、完成度もすごく高いんです。一 方、新たな潮 流としてメタバースや情報空間、サイバー空間が注目され、チームラボに見られるような新しい形の空間アートの出現など、空間の概念はどんどん拡張しています。さらに、テキストや絵 画、イラストの分 野でめざましく発展するAI技術は、遅かれ早かれ空間の分野にも入ってくるはずです。そこで忘れてはならないのが、やっぱり空間は人間のための空間であるということ。AIが出す多 様な答えに対して、人 間の感 覚を大切にして、正しい選択ができる人を育てる必要があります。今までの世の中と、空 間のあり方が 大きく変わっていく時代。私たちはこの先の社会のためにまず「何を描くべきか」「何をつくるべきか」をしっかりと考えていきたい。これからの世の中で「何が必要か?」をしっかり描ける人を育てることも、スペース表現領域のめざすところですね。146後 藤 浩 介 教授(写真左)西 田 秀 己 准教授(写真右)

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