(2021年6月取材)225 ズ』です。99通がダメでも、ひとつ成功すればそれまでのすべてが報われることを実感しました」假屋崎 「まさに一人で世界へ飛び出してチャンスをつかまれましたね。でも100分の1は高い成功率ですよ。アーティストなら、何百回ダメでも『なにくそ!』って次に行ける強い意志、諦めないメンタルが必要です」舘鼻 「最初は何の反応もなくても、ひょんなきっかけで広がっていくかもしれない。最初の一歩を踏み出す勇気はいるけれど、諦めなければ自分次第でどうとでもなる。それを楽しみに発信し続けるのがいいと思います。新しいことはこれまでの物差しで測れないので、評価は後からついてくるのです。レディー・ガガが履いてくれた作品も、卒業制作として大学内では高い評価は受けなかったほどです」假屋崎 「過去と同じことの繰り返しでは表現をする意味がないですからね。私は学生さんには、常にチャレンジャーであってほしいです」舘鼻 「古典的でコンサバティブな要素と、アバンギャルドな要素、どっちも取り入れてほしいですね。表現者は世間一般とは違う自分だけの物差しを信じて作り続けることが大切です」本 物を知らないと、本 物を知らないと、本 物 は 生 み 出 せない本 物 は 生 み 出 せない舘鼻 「華道は昔からあるものですが、取り扱う素 材は 生 花なので、刻々と姿が移り変わって、常に同じ姿ではないのが面白いですね」假屋崎 「朝と夜でも違うし、チューリップなんかは太陽の方向を追いかけてどんどん花が 動きます。それに、買ったまま忘れていた玉ねぎから芽が伸びちゃった姿なんかも『面白いなぁ!』と思います。日常の中には美しいもの、面白いものがいっぱいありますよね」舘鼻 「そうした美を発見する感性を磨くために必要なことは何だと思いますか?」假屋崎 「自分の根底に、誰にも負けない技術や知識をたくさん蓄積すること。それが偽物ではなく本物を生み出す力となります。そのためにも、世界中の良いものにたくさん触れてみること。例えば、私の父は昔から建築が大好きで、家族でさまざまな神 社 仏 閣を巡りました。その影響で私も建築好きになって、今では松山城や名古屋城などの古い建物にお花をいける『歴史的建築物に挑む』という個展をライフワークとして続けています」舘鼻 「なるほど。僕は最初に海外へ出た半面、ここ数年はあらためて日本をベースに活動しています。そのことが日本を見つめ直す良い機会になりました。自分の背 景や日本の歴 史・文 化を振り返り、また次の新しいことに向かっていく。僕の制作にはそういう温故知新のサイクルがあると感じています」假屋崎 「壁にぶち当たって、挫折を経験して、それを乗り越える経験はすごく大事です。疑問や違和感をないがしろにせず悶々と悩むことは成長の原動力になります。さらに視野を広げて自分を客観的に見るために、今は難しいけど、学 生さんにはぜひ海外に飛び出してみてほしい。女子美から世界へ羽ばたく方がどんどん増えてほしいですね」美 は 世 界をつなぎ 、美 は 世 界をつなぎ 、未 来をつくり、人を幸 せにする未 来をつくり、人を幸 せにする舘鼻 「今は、自分から発信する方法がたくさんあります。国境や年齢、性別の壁をいとも簡単に飛び越えられる。そんな中、ものを作る人たちは、新しい価値観、新しいコミュニケーションの形を生み出せる立場にあります。とても誇らしいことです」假屋崎 「美や感動を生み出す人はジャンルが違ってもリスペクトし合える。それも素晴らしいことですね。美は心を動かして、つながりを呼び、経済も動かします。美術や美しいものには未来をつくるパワーがある。人が幸せに生きるためには美意識が必要だと思っています。私は実のところ人間性はスパッとしているんです。それは確かな美意識があってこそ。美意識が磨かれていれば、自分のエネルギーやお金をどう使うか優柔不断にならずに決められます。美意識は常に試行錯誤して、よりよく磨いていくものです。私はコロナ禍で、好きに使える時間がむしろ増えて、人生が豊かになりました。今は、自分と向き合ういいタイミングだと思っています」舘鼻 「インプットに励み、引き出しを増やす時期ですね。僕も今までできなかったことに集中できる時間が増えました。アフターコロナに向けて準備をしています。表現者にとってコロナ禍はチャンスでもあるわけです」假屋崎 「学生さんの中には、コロナ禍のストレスを感じている人も多いことでしょう。でも、チャンスは準備をした人にやってくるんです。コツコツ知識を貯め、技術や発想を磨いて、いざという時に備えてくださいね」
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