大学案内2026
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一代目のふささん(明治41年頃)明治生まれ。本郷にあった菊坂校舎で学んだ三代目の倫子さん(昭和39年頃)女子美のスケッチ旅行にて四代目(妹)の恵理子さん(平成3年頃)学生時代の体験が今も原動力に二代目の信子さん(昭和11年頃)とてもお洒落な方だったという四代目(姉)の真理子さん(平成 3年頃)夜遅くまで、仲間と制作に没頭していた五代目の好央さん(令和6年)246(写真左から) 松本恵理子さん(雅号/松本宴理子)、松本好央さん、和田倫子さん(雅号/和田伊生)、夏目真理子さん「子どもの頃から絵を描いたり、ものを作ることが大好きでした。終戦の年に生まれ物のない時代に育ちましたが、女子美を卒業し手仕事が好きだった母は、服を手作りしたりハンカチに刺繍をしたりしてくれていました。私が好きな道に進めたのは、祖母や母が女子美で培った心の余裕に触れていたからかもしれません」。そう語る倫子さんは、1965年に短期大学 造 形 科 図 案 教 室を卒 業したご一 家の三代目女子美生。祖母・ふささん(一代目)、母・信子さん(二代目)からバトンを受け継ぎ、やがてふたりの娘にバトンを渡した。「娘たちを女子美に入れたかったし、娘たち自身も入りたくて、一生懸命に努力していました。ふたりとも高校時代は放課後に毎日休みなくアートスクールに通い、念願の女子美生になりました」(倫子さん)。そうしてご一家の四代目女子美生となった、姉の真理子さんと妹の恵理子さん。真 理 子さんは 短 期 大 学 彫 塑 教 室を卒業 後、1991年 に 専 攻 科を 修 了。妹 の恵理子さんは短期大学彫塑教室から芸術学部芸術学科造形学専攻に編入し、1993年に卒業した。「物心ついた頃には、母が自宅の絵 画 教 室で子どもたちに絵を教えていました。夏 休 みには 油絵、年末には年賀状のための版画づくりなど、作ることの楽しみが常に生活の中にありました。ふたりでよく一緒に絵を描いていましたね」と話すおふたり。姉妹でライバル心のようなものもあったのだろうか。「そういう風に考えたことはなかったですね。人のことはそんなに気にならないんです。女子美時代の友人たちもそうでした。いいところは取り入れて、それぞれにがんばろうって。みんな、自分をしっかり持っていたんですね」そんなご一家から、2022年4月に五代目女子美生が誕生した。恵理子さんの長女、好央さんだ。「母から女子美時代の楽しかった思い出はよく聞いていて、心の中になんとなく女子美という存在がありました。本格的に受験を考えたのは、高2になって具体的に進路を考えた時でした」。そう話す好央さんが選んだのは、明 治 時 代 から12 5年 の 歴 史 を 刻 む 女 子 美。母 娘 2 世 代で 女 子 美 生という方も珍しくありません 。 そん な な か 、2022年4月になんと女 子 美 史 上 初といえる「 五 世 代で女子美生」のご一家が誕生しました。明治から令和に至るまでご家族に受け継がれる、女子美マインドとは?洋画専攻。「母と祖母が墨彩画をやっていて、私自身も幼少期からずっと描いていました。だから日本画は大好きで身近な存在です。そんななかで進学先に洋 画を選んだのは、1年 次で 洋 画・版画両方の技法を学べることや、銀細工、CG、メディアなど幅広い表現力を身につけられるカリキュラムが魅力的に感じたから。幅広く自由に学んだうえで、好きな日本画ならではの空気感や線の魅力を、日本画という枠にとらわれずに表現していきたい」と話してくれました。ところで好央さん、入試にあたってご家族からはどんなアドバイスをもらっていたのだろうか。「受験を決めてからは美術 予 備 校に通わせてもらいましたが、母と祖母にも描いた作品を見せ、アドバイスをもらっていました。ふたりとも褒めて伸ばすタイプ。絵の魅力を引き出しながら教えてくれたので、入試にも自信を持って挑めました」と、好 央さん。そんな好央さんを応援し続けた母・恵理子さん、そして祖 母・倫 子さん、伯 母・真 理 子さんも、次 世 代 の 女 子 美 生になった好央さんを見守りながら、嬉しい表情を浮かべていた。念願の創作の道へと進んだ好央さん。その 大 先 輩 である3人 の 元 女 子 美 生は、現在もそろって創作活動を続けている。結婚、妊娠、出産、子育て。たくさんのライフステージがある女性にとって、美術をずっと続けていくことはそれほど簡単なことではない。最後に3人に、美術を「続けるコツ」を聞いた。「“好き”であることだと思います。そして続けていくうちに、より好きになるんです」(倫子さん)。「どんなに細くてもいいから続けること。どんなに大変でも、必ずよかったと思える時がくるんです。それが 嬉しくて、また描こうと思う。その繰り返しです」(恵理子さん)。「思い立ったら、小さなものでもいいから作る、描く。立ち止まらずにやっていく。止まってもまた一歩踏み出す。そうして私は、少しずつ作り続けています」(真理子さん)。明治から令和まで、物作りの精神をつないできたご家族の挑戦は、まだまだ続いていく。五 世 代 で 女 子 美 生

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