(左)「舞台芸術プロデュース演習」での学びを通じ、学外でのパフォーマンス公演にも参加 (右)「クリエイティブ・プロジェクト演習」。海外から滞在中のアーティストのトークイベントを企画し、YouTubeライブストリーミングで配信アートプロジェクト作品制作や展示、アーティストとの交流やイベントなど、アートを通して地域や施設を活性化させたり、人の関係性をつくり出すことを見据えた試み。日本各地で開催されている地域芸術祭をはじめ、美術館やギャラリーといった従来の展示の場以外も用いて展開されているものが多い。ドラマトゥルク舞台芸術の制作現場における、知的作業に関わる役割。原作や脚本のもつ歴史的・社会的背景などを役者や制作スタッフに伝達・解説することで制作にヒントを与えたり、円滑に制作現場を回すための助言・調整などを行なう。08Keyword 04Keyword 05ことは大事で、見えないところで実は「裏方」の方が主導的に物事を進めていることは少なくありませんよね。潘:そうですね。日沼:「裏方」志望の子たちは、おそらく「マネジメントやプロデュースにはマニュアルやノウハウがあるんじゃないか」とか「こういう能力があれば『裏方』になれる、それを学ぶところ」と想像をして入学してくるんですけど、特にCPでは、もし「裏方」になりたいんだったら、アーティスト以上の感性や観察力をもってほしいなと思うし、「つくれないけど、心の中にあるマグマ」みたいなものを強くもっていてほしい。仮に自分の代弁者として表現する人を支えるんだったら、その一番近くにいなきゃいけないんですよね。例えば、展覧会やアートプロジェクトを成立させるためには「このアーティストの発表の場がこういう理由で必要なんです」と外の人を説得しなきゃいけない。そんなときに、やっと初めて美術や歴史の知識が必要になってきます。これまでこんな社会的な文脈があって、そのうえでアーティストたちの表現が今ここに必要なんだ、求められているんだということを、周辺からリサーチして伝えて、舞台に乗せてあげる。そういう点では、アーティストが何を求めているかを深く理解している必要があるし、本人たち以上に先回りして考えないといけない場面だって多い。日沼:だから、コミュニケーション能力も必要ですし、まずやってみる、自分の経験を重ねていくっていうことが、実はプロデュースなりマネジメントの本当の第一歩だと思います。演劇や音楽の授業を通して「役者ってどういうことに葛藤したり、喜びを感じるんだろう」みたいなことを知ったり。ぼんやりとした「好き」を、ちゃんと自分のものにしていくための経験を積んでいく場所がCPなのかなって。潘:自分でつくってみる、演者になってみることで新たに見えてくる視点を自分のものにするということですよね。解説文を読んだだけで、作品の歴史的な背景が理解できるわけじゃない。そのなかに身を投じて経験することでわかることってやっぱりたくさんあって、そこからもう一回自分で考える経験を通して深まっていく─それはすごくクリエイティブなことでもあるし、その経験が、どういうふうに表現と社会とをつなげていくか、その「つなげ方」にも多様性を生むんじゃないかなと思います。日沼:演劇だったら「ドラマトゥルク」っていう役割がありますよね。脚本なり、作品の第一次的なものを咀嚼して制作メンバーに手渡していくにしても、咀嚼する人が違えば作品もまったく違うものになっていくし、それが醍醐味だったりする。そういうのはやっぱり、自分自身が演者側を経験するところからスタートすると思うんですよね。役者をやっていた人たちがそういう技術に長けてたり、あるいはダンスを極めていった経験の先に、振付家としてのキャリアがあったり。例えばキュレーターで横浜美術館館長の蔵屋美香さんは、女子美の洋画専攻の出身です。「急がば回れ」じゃないですけど、そういう体験を、4年間かけてどっぷり積んでほしいなと思うんです。表現と「裏方」の間には、はっきりとした線引きがあるわけでは全然ない。まずやってみる/急がば回れ
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