「ミュージアムスタディ演習」授業風景。パフォーマンスの記録、作品化のプロセスを学ぶ課題06そういうことを想像しながら鑑賞するっていうのはすごく大事ですよね。日沼:先日、この授業で日本民藝館(「美の生活化」を目指す民藝運動の提唱者・柳宗悦が1936年に東京・駒場に開いた施設。日本をはじめ諸外国の工芸品が収蔵・展示されている)に出かけたとき、館内の撮影がNGだったこともあって、学生にそれぞれ自分の気に入った展示品をスケッチして、キャプションもメモしてきてもらったんですね。後日それをバーッと壁に貼り出してみんなで眺めながら「なんでこれを選んだのか」「どうして気になったのか」みたいな話をする──ということをしていて。日本民藝館で展示されているものって、誰かがショップで「素敵な食器」と思って買ったものとは違いますよね。例えばさまざまな地域で普通の人たちが日常的に使っているもののなかで、合理的な用途もありつつ、ほかにはない形や素材を使っていて、そこに美しさがあるということで譲り受けてきた、そういうものが収集されている。「制作年不明」とか「作者不明」のものもありますが、それらをくまなく観察しながら、ここに集めてきた人たちの思いをみんなでスケッチを通してなぞってみる。そんななかで、タッチの違いや、イラストっぽいアプローチの人がいたり、スケッチ自体がみんなめちゃくちゃ面白いんです。それもやっぱり「表現」なんですよね。潘:個性ですしね。日沼:木彫りの鞘に入っているアイヌの短刀を選んだ学生がいて、スケッチの線も力強くて、アイヌ特有の素朴さがすごく出ている。その人がそれを選んだ理由が表われてたし、そういう発見が日々の授業のなかで行なわれているなと思っていて。つくる以前の「自分」っていう存在、つまり「表現の発見」をしていくことにつながっています。潘:私が担当している授業では「私の表現の始まり」というのをテーマにしていて。自分にとって表現を始めたときのことを表現するという、すごく抽象度の高いテーマです。もちろん人によっていろいろな始まりがあると思うんですけど、でも誰でも、必ずどこかに何かしらのきっかけがある。例えば幼稚園でのお絵かきとか。実は私たちって無意識のうちに、小さい頃からいろ表現は、自分の居場所をつくること
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